2015年3月6日金曜日

中国における意匠制度の特徴や注意点

Q:新規事業として、中国で家具の製造販売を開始する予定です。中国の意匠権に注意した方がよいと聞きましたが、中国における意匠制度の特徴や注意点を、日本の意匠制度と比較しつつ教えてください。

A:
1.概要
 中国において、「意匠権」は「特許法(専利法)」によって保護されています。中国での意匠出願件数は、年々増加傾向にあり、出願件数も非常に多いです。例えば、2013年のデータですが、中国の出願件数は659、563件であり、日本の出願件数(31、125件)の約20倍程度も毎年出願されています。中国の意匠出願の多くは、中国国内からの出願であり、さらに個人による出願も多いことが一つの特徴です。


2.意匠制度
 中国における意匠登録は、①出願、②方式審査、③登録・公告の順で進められます。
①出願
 提出書類として、願書、意匠の図面または写真等の他に「意匠の簡単な説明書」が必要です。「意匠の簡単な説明書」には、物品の説明や捜索の要点を記載する必要があります。
 2009年10月以降、中国では類似意匠が認められています。これは、同一製品に2つ以上の類似意匠がある場合は、1つの出願に含めることができます。日本における関連意匠制度とは異なります。日本の関連意匠制度は、本意匠と関連意匠の意匠権はそれぞれに別々出願、登録され、独自の効力範囲を持ちます。
 また、中国には部分意匠制度がありません。このため、日本で部分意匠として意匠登録出願を行ったものを中国へも出願する場合、全体意匠を記載した図面を中国に提出する必要があります。このとき、中国で優先権を主張するためには、日本の出願で全体意匠が明らかになっていなければなりません。
②方式審査
 日本では、実体審査が行われますが、中国では方式審査のみになります。
③登録・公告
 中国における意匠の存続期間は、出願日から10年です。日本は登録日から20年になります。なお、意匠権は公告日から有効になります。


3.調査
 中国で家具を製造販売される場合、意匠調査をされることをお勧めします。中国における意匠調査は、国内または中国の弁理士等に依頼されてもいいですが、中国特許庁(SIPO)の専利検索サイト(http://www.sipo.gov.cn/zljs/)を利用して、貴社内で行うことも可能です。
 中国意匠は、ロカルノ協定に基づく国際意匠分類(32の大分類と219の小分類で構成)により分類されています。日本の意匠分類(13のグループ、77の大分類、3196の小分類)と比べると、国際意匠分類は小分類数が少なく、1分類あたりに含まれる意匠数が多くなっています。このため例えば、テーブルの意匠を検索する場合、日本であれば、日本意匠分類・Dタームの現行D7(家具)を選択した後、さらに、51ある小分類を利用することにより、ダイニングテーブル、センターテーブル等のように、細かく絞り込んで検索することが出来ます。
 しかし、中国のような国際意匠分類の場合、検索ターム6(家具)を選んだ後、15ある小分類のいずれかを選択して検索することになります。このため、ヒット件数が多くなり、本来サーチの必要の無い資料まで調査しなければならず、日本に比べて効率的なサーチが困難です。
 例えば、中国で「テーブル」を検索すると、4~5万件ヒットします。キーワード検索により、更に絞り込むこともできますが、中国では、テーブルといっても名称が様々あります。さらに、上記のサイトでキーワード検索するには、中国語を入力する必要があるため、中国語の理解も必要となります。このような点で、中国における意匠調査は、日本における意匠調査よりもハードルが高いことも事実です。お困りのときは、お近くの弁理士等にご相談されることをお勧めします。

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