2015年7月20日月曜日

審査請求料 特許料の軽減申請等

「発明」のQ&A

Q:特許料が1/3になると聞きましたが、詳しく教えてください。


以前より、個人・法人、研究開発型中小企業等を対象にした特許料等の減免制度はありましたが、平成26年4月1日より新たな軽減措置が施行され、当該軽減措置を受けることによって、国内出願を行う場合には「審査請求料」と「特許料」が、国際出願を行う場合には「調査手数料・送付手数料・予備審査手数料」が、それぞれ1/3に軽減されるようになりました。ここでは、国内出願を行う場合における「審査請求料」と「特許料」の軽減措置についてご説明します。

(1)対象者
 以下の要件を満たす出願人が軽減措置を受けることができます。
①小規模の個人事業主(従業員数が20人以下(商業又はサービス業の場合には5人以下)) 
②事業開始後10年未満の個人事業主
③小規模企業(法人)(従業員数が20人以下(商業又はサービス業の場合には5人以下))
④設立後10年未満で資本金3億円以下の法人
 なお、①③における「商業又はサービス業」とは、卸売業、小売業又はサービス業のことをいいます。
 また、③④の場合において、大企業の子会社など、支配法人のいる場合は除かれます。

(2)軽減措置の内容
・審査請求料:1/3に軽減
 平成26年4月~平成30年3月までに審査請求を行うものが対象になります。
・1~10年分の特許料:1/3に軽減
 平成26年4月~平成30年3月までに審査請求が行われた案件が対象になります。

(3)手続き
 原則として、出願審査請求書又は特許料納付書を提出する際に、軽減申請書に必要書類を添付して特許庁に提出します。
 しかしながら、軽減の要件を満たしているのに軽減申請を行わずに審査請求料又は特許料を納付してしまった場合には、納付後1年以内であれば、後からでも軽減申請を行うことにより、既納手数料の返還を受けることができます。ただし、審査請求料の場合には、特許出願が特許庁に継続していることが要件となりますので、既に特許されている場合等においては、1年以内であっても後から軽減措置を受けることはできません。

(4)共同出願の場合
・共同出願人のそれぞれが上記(1)の要件を満たしている場合には、それぞれが軽減申請を行う必要があります。
・共同出願人のうち、一部の出願人のみが上記(1)の要件を満たしている場合には、当該一部の出願人が軽減申請を行うことにより、当該一部の出願人の持分に応じた金額が免除されます。

(5)その他
 審査請求料の軽減措置を受けるには審査請求時に上記(1)の要件を満たす必要があり、特許料の軽減措置を受けるには特許料の納付時に上記(1)の要件を満たす必要があります。よって、例えば、出願時には上記(1)の要件を満たしていなかった者であっても、審査請求時において上記(1)の要件を満たしている場合には、審査請求料の軽減措置を受けることができます。また、審査請求料の軽減措置を受けた者であっても、特許料の納付時において上記(1)の要件を満たしていなければ、特許料の軽減措置を受けることはできません。

 なお、上記の内容はあくまでも国内出願の場合であって、国際出願においては要件が異なります。

2015年7月10日金曜日

先使用権を立証するための公証制度について

「発明」のQ&A

Q.先使用権を立証するための証拠の証拠力を高めるために、公証制度を利用することが有効であると聞きました。公証制度について教えて下さい。

A.
 発明を特許出願しないで、ノウハウとして秘匿した状態で実施する場合、他社が同じ発明について特許を取得したときに備えて、先使用権を立証するための証拠を予め準備をしておくことが望まれます。
 この場合、証拠の証拠力を高めるために、証拠の成立の日や証拠が改ざんされていないことなどを証明する必要があります。このような証明のために、公証制度を利用することが有効です。

(1)公証制度とは

 公証人が、私署証書に確定日付を付与したり、公正証書を作成したりすることで、法律関係や事実の明確化ないし文書の証拠力の確保を図り、私人の生活の安定や紛争の予防を図ろうとするもの。
・公証人:判事、検事、法務事務官などを長年勤めた人から法務大臣が任命する。
・私署証書:署名、署名押印又は記名押印のある私文書。
・公正証書:公証人が、当事者の依頼に応じて、作成する公文書。

(2)公証人が提供する主な法律サービス

①確定日付
 公証役場には「確定日付印」が備え付けられており、私署証書に確定日付を押印してもらうことにより、私署証書がその日付に存在していたことを証明できる。
 書類の作成日が証明されるものではありませんが、確定日付の日に書類が存在していたことが証明できます。
 書類を封筒に入れて公証役場で封印し、確定日付を付与してもらうこともできます。この場合、封筒に封入された書類は確定日付以前に作成され、また確定日付以降に改ざんされていないことが証明されます。
 書類だけでなく、物品の場合は、物品を段ボール箱に入れて公証役場で封印し、確定日付を付与してもらうこともできます。この場合も同様に、確定日付以前に物品が成立していたこと、確定日付以後に改ざんされていないことが証明できます。

②事実実験公正証書
 事実実験公正証書は、公証人が実験、すなわち五感の作用で直接体験した事実に基づいて作成する公正証書。
 例えば、工場内で行う製造方法について将来的に先使用権を証明する必要性がある場合に備えて、公証人を現地工場に招き、使用する材料、機械設備の構造・動作、製造工程等を直接見聞してもらい、そして公証人が認識した結果に基づいて公正証書を作成してもらいます。先使用権を立証する必要が生じたときに、この公正証書を裁判所等に提出して、工場内で実施している発明の内容を証明することができます。

③私署証書の認証
 私署証書につき、その署名・記名押印が作成名義人本人によってされたことを公証人が証明するもの。
 各種書類について、公証人の面前で書類に作成人が署名・記名押印し、公証人の認証をもらうことによって、書類の作成者が証明されます。
 画像データ等を記録したDVDなどのように文書でない物でも、封筒や箱に封入し、作成者の署名・記名押印した説明書について認証を受け、これを封筒や箱に添付することにより、DVDなどの作者を証明することも可能です。

④宣誓認証
 公証人が私署証書に認証を与える場合において、作成者本人が公証人の面前で証書の記載が真実であることを宣誓したうえで、公証人の面前で書類に作成人が署名・記名押印し、公証人が認証を与えるもの。
 宣誓認証は、公証人が「証書の内容が虚偽であることを知りながら宣誓した場合には過料に処せられる」ことを告知した上で付与されるので、証書に記載された内容の真実性が担保されることになります。
 また、同じ内容の証書を2通用意し、1通は公証役場に保存されるので、内容の改ざんがないことを証明することができます。

⑤電子公証制度
 電子文書の形(パソコンに読み込める電子ファイル)になっている私署証書について、次の公証サービスが利用できる。
・私署証書の認証《電磁的記録の認証》
・電子文書に確定日付の付与《日付情報の付与》
・認証又は確定日付の付与を嘱託した電子文書を20年間保管《電磁的記録の保存》
・認証された電子文書又は確定日付が付与された電子文書の謄本の作成《同一の情報の提供》
・認証された電子文書又は確定日付が付与された電子文書が真正であることの証明《情報の同一性に関する証明》

 公証制度の具体的な内容や、公証サービスの利用につきましては、公証役場にご相談ください。

2015年7月9日木曜日

複数の国内優先権主張を伴う出願の公開時期について

 国内優先権主張を伴う出願の公開は、優先日より1年6月です。
 しかし、複数の優先権主張を伴う出願の場合は、優先権主張したうちの直近の件の出願日を基準として1年6月経過後に公開されます。
 これは、条文上には書かれていません。特許庁の運用は以下の通りです。

●国内優先権主張1件
出願日
①平成26年 1月 9日
②平成26年 5月15日(①を国内優先)
→①の優先日平成26年 1月 9日から1年6月経過後公開

●国内優先権主張2件
出願日
①平成26年 1月 9日
②平成26年 5月15日(①を国内優先)
③平成26年 12月29日(①②を国内優先)
→②の出願日平成26年 5月15日から1年6月経過後公開
(→→よって③の公開は平成27年11月29日経過後)

注意:複数の国内優先権主張を伴う場合、最先の日が起算日とならない。(運用上)
直近の②が1年4月でみなし取り下げとなり、この取下げが確定した後公開手続きに入るため。